相続対策に生命保険はどう使う?非課税枠・受取人・デメリットを整理
この記事でわかること
- 相続人が受け取る死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がある
- 誰が保険料を払い、誰が受け取るかで、相続税・所得税・贈与税のどれがかかるかが変わる
- 受取人の指定や、早く解約すると戻る額が少ないことなど、使う前に確かめる点がある
亡くなった人が保険料を払っていた死亡保険金は、相続人が受け取ると「500万円×法定相続人の数」まで相続税がかかりません。受け取る人をあらかじめ決めておけることも、生命保険の特徴です。一方で、契約の形によってかかる税金が変わり、早く解約すると戻るお金は少なくなります。この記事では、一般的なしくみと注意点を、国税庁の資料をもとに整理します。個別の税額の計算や、商品の比較は扱いません。
相続対策で生命保険が使われるのはなぜ?
主な理由は、次の3つです。
- 死亡保険金に、相続税の非課税枠がある
- 受取人を指定でき、そのお金は受取人のものとして扱われる
- 亡くなったあとに、現金として受け取れる
相続税の申告と納税は、原則として、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です(国税庁 No.4205)。遺産が土地や建物だけだと、納税のための現金を用意しにくいことがあります。死亡保険金は、こうした支払いの備えとして考えられます。
生命保険そのものの役割は、生命保険の役割とは?で説明しています。相続対策の全体の進め方は、相続対策の方法とは?にまとめています。
死亡保険金の非課税枠はいくら?
非課税枠は「500万円×法定相続人の数」です(国税庁 No.4114、令和8年4月1日現在の法令)。法定相続人とは、法律で決まった相続人のことです。
たとえば、法定相続人が配偶者と子2人の3人なら、500万円×3で1,500万円です。受け取った保険金の合計がこの額までなら、相続税はかかりません。
法定相続人の数え方と、非課税枠を使える人には、次の決まりがあります(国税庁 No.4114)。
- 相続を放棄した人も、法定相続人の数には含める
- 養子は、実子がいれば1人まで、いなければ2人まで数える
- 非課税枠を使えるのは、相続人が受け取った場合だけ
- 相続を放棄した人や、相続人でない人(相続人でない孫など)が受け取った保険金には、非課税枠を使えない
相続税そのものは、正味の遺産額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えるとかかります(国税庁 No.4152)。死亡保険金のうち非課税枠を超えた分は、ほかの財産と合わせて計算します。
契約の形で、かかる税金はどう変わる?
死亡保険金にかかる税金は、保険料を払った人、亡くなった人(被保険者)、受け取る人の関係で変わります(国税庁 No.1750)。
| 被保険者 | 保険料を払った人 | 受け取る人 | かかる税金 |
|---|---|---|---|
| 親 | 親 | 子 | 相続税 |
| 親 | 子 | 子 | 所得税(一時所得など) |
| 親 | 配偶者 | 子 | 贈与税 |
相続税の非課税枠が使えるのは、表の1行目のように、亡くなった人が保険料を払っていた場合です。保険料を払った人と受け取る人が同じなら、所得税がかかります。一時金なら一時所得、年金で受け取るなら雑所得です。3人がそれぞれ違うときは、贈与税がかかります。
受取人の決め方で気をつけることは?
受取人を指定した死亡保険金は、原則として、遺産分割の対象になりません(国税庁 4114のQ&A)。受け取ったあとで、ほかの家族に分けると、分けた分は贈与として扱われます。
最高裁判所は、相続人の1人が受け取る死亡保険金は、原則として特別受益(生前の贈与などと同じように扱う取り分)にはあたらないと判断しました。ただし、ほかの相続人との不公平がとても大きい特別な事情があれば、遺産分割で考慮されることがあります(最高裁平成16年10月29日決定)。判断には、保険金の額や、遺産全体に対する割合などが使われます。
受取人を変えるときは、被保険者の同意が必要です。2010年4月以降の契約では、遺言で受取人を変えることもできます(生命保険文化センター)。
受取人を決めるときは、家族の間で不公平感が生まれないかも考えます。家族での話し合いの進め方は、相続対策の方法とは?もあわせて確かめてください。
相続対策で生命保険を使うデメリットは?
使う前に、次の点を確かめます。
- 早く解約すると、戻るお金が少ない:契約してから短い期間で解約すると、解約返戻金はまったくないか、ごくわずか(生命保険文化センター)
- 非課税枠を超えた分には、相続税がかかる
- 相続人でない人が受け取ると、非課税枠を使えない
- 保険料を払い込むと、その分、手元で自由に使えるお金が減る
- 健康状態や年齢によっては、新しく契約できないことがある
保険料をまとめて払い込む契約もあります。まとめて払う場合は、手元に残るお金と、急な出費への備えを先に確かめます。外貨で払う保険は、為替の動きで、円に換えた受取額が払った額を下回ることがあります。
生命保険は何歳まで入れる?
加入できる年齢の上限は、保険の種類や契約によって違います。契約前に、契約先の資料で確かめます。
年齢が上がると、保険料が高くなったり、健康状態によって契約できなかったりすることがあります。すでに入っている保険を確かめ、受取人や保険料を払う人が、いまの考えに合っているかを見直すことも一つの方法です。保険の見直しの手順は、積立保険の見直し方で紹介しています。
迷ったときはどこに相談できる?
判断に迷うときは、内容に合った相談先を使えます。
- 契約の内容や受取人の変更:契約先の保険会社
- 家計や保険の考え方:金融経済教育推進機構(J-FLEC)の相談
- 相続税や贈与税の扱い:税務署や税理士
J-FLECは、特定の商品を勧めない立場で相談に応じています(2026年11月時点)。ここで紹介したのは一般的なしくみで、実際の税額は財産や家族の状況によって変わります。
まとめ:相続対策で生命保険を考えるときの3つのこと
- 相続人が受け取る死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がある
- 保険料を払う人と受け取る人の組み合わせで、かかる税金が変わる
- 受取人の決め方、解約したときの戻る額、加入できる条件を、契約前に確かめる
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.4114「相続税の課税対象になる死亡保険金」(令和8年4月1日現在法令等) (2026年11月時点)
- 国税庁「相続税の課税対象になる死亡保険金」に関するQ&A (2026年11月時点)
- 国税庁 タックスアンサー No.1750「死亡保険金を受け取ったとき」 (2026年11月時点)
- 国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の計算」 (2026年11月時点)
- 国税庁 タックスアンサー No.4205「相続税の申告と納税」 (2026年11月時点)
- 最高裁判所第二小法廷 平成16年10月29日決定(平成16年(許)第11号) (2026年11月時点)
- 公益財団法人 生命保険文化センター「諸変更と届出」 (2026年11月時点)
- 公益財団法人 生命保険文化センター「解約」 (2026年11月時点)
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「相談する」 (2026年11月時点)
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の勧誘や推奨を目的としたものではありません。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。